私たちの研究と治療薬開発
今までに分かっていた
潰瘍性大腸炎の
発生のしくみ-
潰瘍性大腸炎は、何らかの自分の蛋白に対して免疫機能が作動し、それによって産生された自己抗体が誤って自身の大腸を攻撃してしまうことによって起こる疾患であると考えられてきました。
しかし、どの蛋白に対して自己抗体が産生されているかは、多くの研究者が探してきましたが不明でした。
当研究グループが
発見したこと-
潰瘍性大腸炎における
新規自己抗体の発見①当研究グループは長年の研究の末、2020年に潰瘍性大腸炎の患者さんがインテグリンαVβ6という蛋白に対する自己抗体(抗インテグリンαVβ6自己抗体)を持っている、ということを発見しました。 実に9割以上(92%)の潰瘍性大腸炎の患者さんがこの自己抗体を持っていることを発見し、一方で潰瘍性大腸炎ではない方はほとんどこの自己抗体を持っていない、ということが我々の研究によって明らかになりました。
抗インテグリンαVβ6自己抗体による
インテグリンαVβ6-フィブロネクチン結合阻害作用②この自己抗体(抗インテグリンαVβ6自己抗体)が大腸上皮細胞をつなぐインテグリンαVβ6とフィブロネクチンという蛋白質との結合を阻害することを発見しました。
これらの研究結果から考えられる
潰瘍性大腸炎の病態仮説今回発見した自己抗体『抗インテグリンαVβ6自己抗体』が大腸上皮の蛋白インテグリンαVβ6と足場となるフィブロネクチンとの結合を阻害することによって、大腸上皮細胞に障害を与え、潰瘍を形成する、つまり潰瘍性大腸炎を発症する可能性があると考えられます。
測定診断キットの開発
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『抗インテグリンαVβ6自己抗体』の測定は潰瘍性大腸炎の正確な診断と病状の把握に有用であり、患者さんのより良い診療に役立つと考えます。このため、国内抗体診断薬トップメーカーである株式会社医学生物学研究所(MBL社)に御協力頂き、「国立研究開発法人日本医療研究開発機構 医療分野研究成果展開事業 産学連携医療イノベーション創出プログラム」の支援をうけて、測定診断キットを作製しました。
まずは研究用試薬として2021年中に全国の病院で『抗インテグリンαVβ6自己抗体』が測定できるようになります。
2023年までに厚生労働省より薬事承認を得て、2025年までに保険適用となり普及することを目指しています。
根治薬の開発を目指して
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更に現在、当研究グループでは潰瘍性大腸炎の根治を目指す取り組みとして、『抗インテグリンαVβ6自己抗体を産生する細胞だけを消去できる薬』の新規治療薬開発をスタートしています。
ご支援のお願い
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私達のこれまでの研究の成果が正しく、治療薬を開発することができれば、難病である潰瘍性大腸炎の根治を可能にすることができます。
できるだけ早く、何とか治療薬を開発し、根治を達成したいと強く思っております。
しかしながら、薬の研究開発には膨大な労力と時間とお金がかかる現状があります。
当研究グループでは、2025年までの候補薬の完成、2026年からの治験開始を目指して研究開発に邁進しております。
少しでも早く治療薬を開発し、少しでも早く患者の皆様の苦痛を取り除けるように、今回広くご寄付を募らせていただきました。
どうか皆様のあたたかいご支援を賜りますよう、当グループ一同、心よりお願い申し上げます。潰瘍性大腸炎の治療薬開発にご寄付くださる方は下のボタンをクリックしてください。
詳細をご説明したページにご案内いたします。
- 自己抗体
- 抗体とは、細菌などに対して体を守るために体の中で作られるたんぱく質です。自己抗体とは自分の体の中の構造に反応してしまう抗体のことです。
- インテグリンαVβ6
- 上皮細胞に発現するたんぱく質です。上皮細胞と周囲の組織との結合に働きます。
- フィブロネクチン
- 上皮細胞の周りの組織を構成するたんぱく質の一つです。
- 自己抗体価
- 自己抗体の結合力を表します。つまり上図では抗インテグリンαVβ6自己抗体が強くなると、インテグリンαVβ6-フィブロネクチン結合を阻害する作用が強くなっていることを示しています。
- 薬事承認
- 医療行為として認めてもらうためには、PMDAというところで、承認をもらう必要があります。これを薬事承認といいます。
- 保険適用
- 健康保険による医療費負担が可能なものをいいます。保険診療として認可されていない場合は「保険適用外」と呼ばれ、自費診療となります。
- 基底膜
- 上皮細胞を固定する基盤です。コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンといった蛋白質などで構成されます。
- 力価
- 自己抗体の結合力を表します。つまり上図では抗インテグリンαVβ6自己抗体が強くなると、インテグリンαVβ6-フィブロネクチン結合を阻害する作用が強くなっていることを示しています。
- 感度
- 潰瘍性大腸炎の患者さんの中で、抗インテグリンαVβ6自己抗体が陽性になる確率のことです。今回のように90%以上の感度は、非常に優れている検査と考えられます。
- 特異度
- 潰瘍性大腸炎の患者さん以外の患者さんや健康な方で、抗インテグリンαVβ6自己抗体が陰性になる確率のことです。90%以上であれば、良い検査といえます。